本コラムでは、当社コンサルタントの武田が、「キャリアエッセイ2~自分のミッションを求めて~」と題し、キャリアを考える上でのヒントをご紹介させていただきます。今回は、「人としての魅力」をテーマにお伝えします。
人としての魅力

現在、データサイエンティストという仕事が非常に注目を浴びていますが、日本が他国と比べてビハインドであるITを使った社会活動の効率化を促進すべしと、「データ×AI時代」の旗手として政府諸機関の委員も務めておられる安宅和人先生の講演を、先日聴く機会を得ました。興味が湧いたので、その講演に引き続いて、先生の著書『シン・ニホン』を読みました。
最初はガチガチの科学者の本であるかと思いましたが、途中で表題の「人としての魅力」という項があり、至極納得してしまったので、紹介させていただきたいと思いました。
事をなすための条件として、日本の将来を考えた際にテクニカルな能力は絶対に必要で、その研鑽を行うことの大切さを説いておられる一方、安宅先生は、人間社会で成功するための条件として、「運・根・勘・チャーム」を挙げています。チャームとは、チャーミングであること、すなわちアトラクティブな魅力のことです。その魅力の条件を安宅先生は、本当に人間臭い言葉で紹介してくれています。
・明るさ、前向きさ
・信じられる人であること、人を傷つけたり騙したりしないこと
・包容力、愛の深さ、心の優しさ
・協力しあう、助け合う人柄、耳を傾ける力
・ユーモア、茶目っ気
・素敵な裏表のない笑顔
(『シン・ニホン』より一部抜粋)
サイエンスは大切であることは必要条件として、それだけでは大きな力にはなれない、
すなわち他者を巻き込んで、未来のために新しい価値を作るうねりを作ること、そのためには人間的魅力が必要であると先生は教えて下さっています。
どんなにAI化が進み、社会活動が効率化されたとしても、AIをベースとしたコンピュータは、自身の行動(アクション)に意味を感じませんし、またそこに主体的な意志は存在しません。
人間vsAIの囲碁対決でAIが勝利したことは記憶に新しいですが、頭脳をまったく持たないような大腸菌でさえ、外界からの異物攻撃があると察知すれば、安全だと思われる生物体に寄生する習性がある一方で、AIをベースにしたコンピュータは、火事が起ころうとも燃え尽きるまで囲碁を指し続けてしまうのです。
人間が人間である理由は、行動の裏に善悪の倫理観や感情があることだと思います。だから、「信じられる人であること、人を傷つけたり騙したりしないこと」が、その人に従っていく基本的な前提になるのだと思います。