本コラムでは、当社コンサルタントの武田が、「キャリアエッセイ2~自分のミッションを求めて~」と題し、キャリアを考える上でのヒントをご紹介させていただきます。今回は、「『イントゥー・ザ・ワイルド』を見て」をテーマにお伝えします。
『イントゥー・ザ・ワイルド』を見て

この映画は、2007年の米国で作られたものですが、目に見えるものに執着をして生きている現代人に対するアンチテーゼでもあると感じます。勉強会のテーマ作品になっていましたので、アマゾンで購入し視聴しました。
ご存知の方も多いと思いますが、この映画のあらすじは、優秀な成績で大学を卒業した主人公クリストファーが、親の期待に背いていきなり荒野に飛び出し、自由を求めて自然の中で生活をする体験記です。(この後、若干のネタバレを含みます。)
2年間の放浪の後に、最後はアラスカで毒性のある木の実を食べてしまい死亡してしまうのですが、2年の間は、過剰な物質世界からの解放を求め、カネ、モノ、権力という現代社会における目に見える物差しに全く触れず、常に自由と新しい楽しみを見つけながら旅を続けるのです。
両親の不仲が潜在的にクリストファーの心に影を落とし続けるのですが、死に絶える直前に、「幸福が現実となるのは、それを誰かと分かち合った時だ」と、自らの放浪の旅を通して得た英知を語っているところが、この映画の最大のポイントではないかと私は思いました。
いくら自分のスキルが優れていても、また自分の思考が高度なものであったとしても、それを自分のエゴを守るためにだけ活用し、他者のために用いることができなければ、その人間の人生は使命を全うしたことになるのでしょうか・・・
個人心理学で有名なA.アドラーが著した『生きる意味』という本がありますが、その中でアドラーは、私たち市民の使命として、「共同体感覚」に対し真摯になり、自らもその成立のために協力することの大切さを説いています。(「共同体感覚」とは、人が全体の一部であること、全体とともに生きていることを実感すること、そうした感覚のことを指します。)
これは、標題映画でいえば、まさにクリストファーが遺した「幸福が現実となるのは、それを誰かと分かち合った時だ」という言葉に合致します。
クリストファーが英知を得るに至る過程で、トルストイの小説を読みながら、「人の役に立てる仕事をすること」の意義に思いを馳せる場面がありました。
色々と考えさせられることの多い映画でした。