本コラムでは、当社コンサルタントの武田が、「キャリアエッセイ2~自分のミッションを求めて~」と題し、キャリアを考える上でのヒントをご紹介させていただきます。今回は、「ゲシュタルトの祈り」をテーマにお伝えします。
ゲシュタルトの祈り
ゲシュタルトの祈り
私はあなたの期待に応えるために、この世に生まれたのではない。
あなたも私の期待に応えるために、この世に生まれたのではない。
あなたはあなた、私は私。
もしふたり、心が通い合うことがあれば、それは素晴らしいこと。
けれどもし、わかり合えないままであっても、それはそれで致し方のないこと。
この「ゲシュタルトの祈り」というのは、ドイツの精神科医であったフレデリック・S・パールズが創ったもので、同氏はゲシュタルト療法の創始者です。 ゲシュタルト療法とは、「いまここ」の気づきに焦点を当て、過去に囚われることなく、未来を恐れることなく、自らが求める人生を得るための支援をする心理療法です。すなわち、我々が普段耳にすることの多い「認知行動療法」とは少々アプローチの異なる「人間性心理学」という流れに位置づけられる心理療法であると言われています。
社会生活において、多様性を大切にしようとすればするほど、思考の相違について敏感になり許容と優しさが求められるのですが、自分への甘えから、また一種のパーソナリティ障害ゆえに許容と優しさを持てない人間もいて、私たちは共存を模索するとき、そのような悩みから解放されることはありません。
でも、その尽きない悩みに真摯に向き合うことは大切ですけど、逆に自分が崩れてしまっては本末転倒です。この「ゲシュタルトの祈り」は、何かの犠牲になることなく自分を大切にすること、他人を尊重すること、健全な人間関係はその上に成り立つという事を語ってくれていると思います。
過去を過度に引きずらず、原因論だけではなく意味論で物事を考え、「いま」と「自分」を大切にすることを教えてくれています。 「自分を大切にする」というと自己愛偏重のようにも聞こえますが、本来「自分を大切にする」とは、自分勝手なエゴを通すことではなく、「自分」という心と身体を与えてくれた大いなる力に従う前提で与えられる行動なのだと思います。
この祈りは、一種の「達観」なのかもしれません。主観にとらわれ過ぎず、色々な角度から環境と自己の認識ができるように、今後とも学びを続けたいと思います。