事業規模・従業員規模が大きくなるにつれて、従業員のスキルを管理する必要性・重要性が高まってきます。その際に有効になるのが「スキルマップ」です。 この記事では、スキルマップの概要、導入までの手順を解説します。
スキルマップとは
スキルマップとは、従業員ごとに、業務に必要なスキルの習熟度を可視化した一覧です。 必要なスキルを整理し、活用のためのルールを定めたスキルマップの活用で、従業員の効率的な教育や公平な評価が可能になります。 欧米では一般的に「スキルマトリックス」と呼ばれています。
スキルマップの導入状況
少子高齢化などの影響で優秀な人材を確保する事が難しくなりつつある中、今いる人材を最大限に活かすためにスキルマップを導入する企業は業種を問わず増加傾向にあります。特に製造・技術の部門ではISO9001の要求する項目を満たす目的もあり、以前からスキルマップの導入が顕著です。 近年では技術革新や入れ替わりの激しいIT業界でも導入が加速しています。
スキルマップを導入するメリット
組織が大きくなればなるほど、スキルマップの必要性・重要性は上がります。 スキルマップを導入することで得られるメリットは以下の5点です。
①従業員の教育に活かせる
スキルマップを運用する中で従業員のスキル習熟度を把握できれば、それぞれに必要なスキルアップのための研修などの機会を効率的に設けることができます。
②従業員をより最適に配置転換することができる
従業員のスキルが見通せることで、そのスキルを活かせる部署へ配置する事や、人材を求める部署に最適な従業員を配置することができます。
③公正な従業員評価に繋がる
スキルの可視化と合わせて、評価の基準を設けることで、上司個人の裁量に依らない、公平な評価を行う事ができます。
④従業員のモチベーションの維持・向上に寄与する
評価基準が明確になる事で、組織のメンバーの評価などから自分のポジションや課題が見えてくる、競争心が芽生えるなど、従業員のモチベーションの維持や向上に繋がります。
⑤採用のミスマッチを防ぐ
採用担当者が現場で必要とされている人材を正しく判断して確保する事は難しく、ミスマッチが起こる事もあります。 スキルマップの導入・適切な運用は、採用担当者が現場のニーズを正確にくみ取ることを可能にします。組織全体で捉えた際も、将来的に必要になるスキル・不足が予想されるスキルを持った人材を計画的に採用・教育していくことにも繋がります。
スキルマップ導入の障壁は?
導入後は極めて有用なツールであるスキルマップですが、導入するまでにいくつか障壁があります。
①手間がかかる
スキルマップの導入には膨大な手間を要します。 導入段階で目的の明確化、業務の細分化、スキルの設定を行う事が必要です。 従業員規模が多ければ、データの入力や運用もそれだけの手間がかかることになります。
②社員の不満を招く恐れもある
上記の手間の1つとも言えますが、従業員を全員納得させられるスキルマップを作成するのは困難です。 従業員のモチベーションを下げることにならないよう、十分なヒアリングを行い現場の声を十分にスキルマップに反映させる必要があります。
スキルマップの導入手順
スキルマップの具体的な導入手順を紹介します。
①スキルマップを導入・活用する目的を明確にする
どんな目的でスキルマップを導入・活用していくのかの認識を、組織全体で共有しておく必要があります。 スキルマップを目的に則した内容にすることで、運用がスムーズになります。
②業務の細分化、スキルを洗い出す
業務を役割や工程で細分化し、それぞれスキルを洗い出していきます。 スキルのレベル・評価基準を設定するためにも、スキルには「具体性」を持たせることが重要です。
③スキルのレベルや評価基準を設定する
スキルのレベルを、管理や共有がしやすい1〜5段階評価に設定し、それぞれの段階の要件を定義づけていきます。 従業員の評価に直結する極めて重要な作業なので、議論を尽くす必要があります。
④テストリリースしてフィードバックを受ける
テストで部分的にリリースを行い、フィードバックを受けます。 その際重要なのは、評価する側(上司)と評価を受ける側(従業員)それぞれから意見をもらう事です。 評価のしやすさ、あるいは受けた評価の正当性や、その感想を元にスキル項目や評価基準を調整します。
⑤運用マニュアル作成、研修を実施
具体的な評価方法や入力方法だけに止まらず、スキルマップを導入・活用する目的を含めた、総括的な運用マニュアルを作成します。 合わせて研修を実施することで従業員の理解が深まり、より目的に沿って活用される事にも繋がります。
⑥本番リリース
スキルマップの本番リリースで重要なことは「運用しながら改善していくこと」です。 テストリリースだけで拾えなかった問題点を都度改善していくことで、より有用なマップにブラッシュアップしていきます。
⑦定期的に見直す
スキルマップは、業務内容の大幅な変更や、大規模な配置転換のタイミングなどで定期的に見直し、その時の状況に合わせて変化をさせていくことでより効果的な運用ができます。 但し変更が頻繁になりすぎると、従業員のスキル習熟度の変化が分かりづらくなることにもなるので、ある程度の期間を空けることが理想です。
まとめ
スキルマップの導入、運用を通して計画的に組織全体のスキルアップ・強化をしていくことが可能です。 組織がコンパクトな段階で導入しておくことで、効率的な組織力アップが図れることは間違いありません。 この機会にスキルマップの導入を検討してはいかがでしょうか。