人材の採用や配置、育成を考える上で、会社や事業に適した人材の調達や評価ができているのか、不安になることはありませんか?人が人を評価する以上、これが絶対に正解/不正解ということはないのですが、人を見極めることは簡単ではないですよね。特に新卒採用においては、「とりあえず営業で経験を積ませてからその先を考える」というようなやり方を採っている企業も少なくないかと思います。
しかし近年、価値観の多様化やビジネス社会の急速な変化により、一層人材戦略の重要性が増してきました。ジョブ型採用やテレワークという働き方、DXの急速な拡がり、そして労働者の人口減少と流動化といった社会の動きに対しての適応が企業に求められており、時代の流れへの迅速なアジャストが先の明暗を分けるといっても過言ではないでしょう。
そうした社会的背景の中で、注目を集めているのが「タレントマネジメント」です。タレントマネジメントを導入すれば、採用や配置、育成をより適切に行える可能性が高まるだけでなく、従業員から感謝されるような人事が実現できるかもしれません。 そういうわけで今回は、タレントマネジメントについて解説していきます。
人事ならではの悩みであり、永遠のテーマ
採用や配置、育成を考える際、一番悩ましいのが「採用者や従業員のことがよく分からない=人材を見極めることが難しい」ということではないでしょうか?
例えば、10年以上付き合いのある友人でも「得意/苦手なこと」「持っているスキルや資格」「職歴や学歴」「実績」の全てを把握できている人は、あまりいないのではないでしょうか。それが自社の従業員であれば尚のことでしょう。無論、企業規模が大きくなればなるほど「よく分からない従業員」が増えるのは当然のことです。大企業レベルだと「同じ会社に属しているのに、顔も名前も知らない人が数百人以上いる」という話もよく聞きます。
しかし、それでも評価や配置を考えなければならないのが人事の宿命です。殆ど言葉も交わしたことのない従業員相手でも、営業であれば実績ベースである程度の判断はできますが、事務や経理になると、もはや直属の上司など管理者の評価を信用するしかありません。もちろん従来のこの構造上であり続ける限りは、社内営業ができる人が上に上がり、そうでない人はどれだけ能力が高くてもスポットライトが当たることはありません。この陰の従業員の中に、とんでもない逸材がいるかもしれないのに…。
ではどうすれば良いか。それに対する一つの答えが、従業員(タレント)の能力に着目したタレントマネジメントという手法です。
タレントマネジメントとは?
タレントマネジメントとは、一言で言えば「適材適所」を正しく行うためのものです。より詳しく言うと、従業員(タレント)が持つ能力やスキルといった情報を重要な経営資源として捉えて一元管理し、採用や配置、育成に活用することで、従業員と組織のパフォーマンス最大化を目指すマネジメント手法です。
具体的にはどういう手法なのか、要点を3つにまとめて解説します。
1. スキルや実績、適性を「見える化」し、一元管理する
従業員一人一人の職歴や学歴、能力、スキルをデータとして一元管理することで、従業員全員の情報を見える化します。一元管理することで、情報を全社的に共有できます。これにより、これまでの主流であった「とりあえずやらせてみてから配置を考える」というスタンスの「”仕事”に”人”を当てはめる」というやり方ではなく、適性の有無を把握し「”人”に”仕事”を当てはめる」というやり方が可能になります。
また、ここでポイントになるのは、あくまでも実績ベースではなく、適性で判断するということです。
営業トップの成績だからといって、別のことをさせても同様に活躍できるとは限りません。野球やサッカーで優秀だったプロ選手が監督としても優秀かどうかはまた別なのと同様です。逆に現役時代は殆どベンチだったとしても、コーチ業に転身して大きく成功する人がいるのもまた然りです。
各従業員がそれぞれ得意な業務に就けば、生産性がアップし、パフォーマンス向上が見込めるのは言うまでもありません。
2. 人材の過不足を判断し、採用と配置を進める
従業員の能力を可視化した後は、全社的に適性のある人材の過不足状況を把握します。必要としている人材が本当に足りないのか正しく把握することで、求人や採用の質の向上も図れるでしょう。 実際のギャップを把握するためにもタレントマネジメントは有用です。もちろんタレントマネジメントは手法の一つに過ぎませんが、従業員の能力を正確に把握しているかどうかで採用戦略に差が出るのは間違いありません。
また人材を必要としている事業や部署の戦略次第で、新卒採用なのか中途採用なのか、アルバイト採用や派遣で良いのか、或いはフリーランスへの業務委託になるのか。最適な人材の調達方法を選択できるようにもなるでしょう。
3. モニタリングにより、更なる退職率低下を目指す
月1回のアンケートや面談など、継続的なモニタリングによって離職率の低下を目指します。適性に合った業務に就くことで従業員満足度は向上しますが、その採用や配置が適正かどうかの確認は、モニタリングによって行われます。継続的に接触することで軌道修正を図りつつ、従業員の些細な変化にもいち早く気付けるようになれば、更なる退職率低下が見込めるでしょう。退職防止のためにリレーションシップを重視することも、タレントマネジメントの特徴の一つと言えます。
さらに、離職を防ぐことでリーダー候補の育成もより計画的に行えるようになります。適材適所に従業員を配置することにより、能力向上のスピードを上げられるだけでなく、リーダー候補を育てやすい環境を作ることもできるのです。
導入にあたっての注意点
先ほども述べましたが、タレントマネジメントはあくまでも手法の一つに過ぎないということです。会社の経営戦略やビジョン、目的と合わさって初めて意味を成すものです。タレントマネジメント自体が目的とならないようにしましょう。
導入の前には必ず目的をはっきりさせた上で計画を練り、全社的にコンセンサスを得ることが肝要です。加えて、そもそも企業が「どのような人材が欲しいのか」をはっきりさせること、さらに優秀な人材の定義化をする必要があります。
まとめ
いかがだったでしょうか。タレントマネジメントによって適材適所な配置と採用を実現できれば、会社の大きな成長が見込めることはもちろんのこと、従業員からも感謝されるような人事が実現できるかもしれません。多くの企業での採用が進んでいるタレントマネジメントですが、あなたの会社でも導入を検討してみてはいかがでしょうか?