本コラムでは、当社コンサルタントの武田が、「キャリアエッセイ3~自分のミッションを求めて~」と題し、キャリアを考える上でのヒントをご紹介させていただきます。今回は、「現実はいつも対話から生まれる」をテーマにお伝えします。
『現実はいつも対話から生まれる』

先日参加したキャリアカウンセリングの研修時に、標記の図書を参考図書として推薦いただきました。
同書の著者ガーゲン夫妻は、「社会構成主義」という考え方を基本に、物事の捉え方を広く持つことの大切さを
説いてくださっています。
現代は「科学的真実」というフィルターが一般的であり、死に至る病気の根絶から原子力の利用まで、
科学が成し遂げてきた功績が科学万能主義につながっていますが、果たして宗教やスピリチュアルな伝統には
真実は存在しないのか・・・・社会構成主義はこういう問いを発しています。
そして、科学が正しい、宗教が正しい、という対立概念で考えるのではなく、「両方とも/そして」の立場で
考えようとするものです。また、思いや言葉が個人の中にとどまっているうちは無色であるけれども、
他者とのコラボレーションを行い始めた瞬間に初めて「意味」が生まれるので、真実はコミュニティの中にこそある、と社会構成主義では考えます。
この社会構成主義の考え方は、組織のリーダー論にも展開されています。
カリスマリーダーがメンバーを強引に引っ張る「リーダーシップ1.0」は、時と場合によっては必要な場面も
あるかもしれませんが、社会構成主義では、リーダーを含めたメンバー内で対話が生じ、対話に参加したメンバー全員が、
リーダーシップの役割と行動を自ら創造するように変わることが必要だ、と考えます。
すなわち、リーダーシップとは「リーダーの所有物ではなく、その組織の1つの側面である」としています。
このように、組織の課題を全員が「自分事」として捉え、自律的に参与していくような雰囲気にすることこそ
真のリーダーシップなのではないかと個人的には思いました。
先日新聞に、今後大学教育の現場では、専門分野だけに特化した教育を行うのではなく、幅広く教養を修得することが大切である
との記載がありました。
今後はデジタル社会が到来するからこそ、人の心や思いを考えようとすることがより必要になるゆえ、
コンピュータと数字の学びとともに、哲学、文学をはじめとする人文科学系の学問の学びも必要なことと、私は心から感じています。
社会構成主義的に、複眼的な眼で物事を捉えることのできるような学びを継続したいと思います。