本コラムでは、当社コンサルタントの武田が、「キャリアエッセイ2~自分のミッションを求めて~」と題し、キャリアを考える上でのヒントをご紹介させていただきます。今回は、「『良いこと』と『好き嫌い』の使い分け」をテーマにお伝えします。
「良いこと」と「好き嫌い」の使い分け
先日、楠木建先生の「経営センスの論理」という書籍を読みました。また、楠木先生が登壇されている講演も拝見いたしました。
楠木先生曰く、ビジネスでは「良し悪し」が優先して「好き嫌い」が劣後する傾向があるが、名経営者といわれる方々の成り立ちやお話しを聞くと、「好き嫌い」にこだわってこられた方も多い、とのことです。
スティーブ・ジョブスはその最たる例になるでしょう。また日本でも、柳井さん(ユニクロ)や藤森さん(LIXIL)などの方々の話を聞くと、確かにそのようにも感じます。
「良し悪し」という尺度は、別の言葉で表現すれば、「スキル」とか「ロジカルシンキング」で、共通言語・共通論理に基づいた世間一般の価値尺度からの判断です。またスキル的なものですから、ある程度努力すれば、だれでも身につくものといえます。ビジネスパーソンとしては、一定量は自分で習得しながら、目前の仕事に取り組むことが求められるでしょう。
一方で「好き嫌い」は、チームのことを考えず、自分自身の私利私欲から発することは、社会人として許されないことです。そのようなことを認めたら、組織として成立しなくなってしまいますから。
ただ、仕事のセンス、もっと言えば経営のセンスといったものは、スキルの蓄積で得られるものなのでしょうか。答えは「NO」であると楠木先生は言われています。 センスの無い人は無いままで終わる、ということです。
「スキル」vs「センス」は、モチベーションの世界でも角度が異なります。スキルが外的誘因に基づくものであれば、センスは内的動因によるもので、スキルの世界は相対的な世間の渦に巻き込まれて承認されるけれども、センスの世界は枯れることが無い。世間の尺度ではおかしいと思っても、本人にとってはその過程も結果も、「センスがいいでしょ」という感じになります。
メンタル面でも大きな違いがありそうです。「努力しなければ・・・」という姿勢は大切だけれども、そこに辛さや無理が加わると、「スキル」獲得は修行になってしまいます。その点、内発動機に支えられた「センス」の世界は、ドライブの掛かるフローの世界になりますね。
顕在意識の上では、良し悪しで対応しようとしても、人間は潜在意識下ので「好き嫌い」を制御しきれないのだとしたら、他者に迷惑を掛けたり、また他者の心を踏みにじるような行動は慎むことは前提の上で、もう少し「好き嫌い」を優先させて、その上で社会貢献できるような場を作っていく機会を考えたいと思います。