本コラムでは、当社コンサルタントの武田が、「キャリアエッセイ~自分のミッションを求めて~」と題し、キャリアを考える上でのヒントをご紹介させていただきます。今回は、「企業の品格とは」をテーマにお伝えします。
企業の品格とは
私たちは社会生活をする上で、何らかの組織の中で、協調し時には妥協しながら生きていくことも必要です。いくら自営業とはいえ、100%独力で生きることはできません。
人間の価値観はそれぞれ異なり、また与えられている立場もそれぞれ異なりますから、他者との関係は必ずしも常に順調にいくとは限らず、時にはコンフリクトな状況になることもありますね。
そういった状況においての対処の方法や姿勢によって、当人の真の品格が出るものだと私は考えます。なぜそう思うかというと、自分の考えを主張し、自分の思っている正義を伝えること自体は必要だと思いますが、その伝え方によって、他者の心を本当に動かすことができるかどうかは大きく異なるものだと思うからです。
社会的な役割や立場の無い人間はいないと思います。そういった中で、それぞれの立場や役割はそれなりに理解しても、その他者の置かれている状況に全く配慮なく、自分の正義だけを主張するような人間は、いくら正論であっても、中々受け入れられないものです。
とくに企業体においては、職位により指示命令系統が明示され、基本的には社長を筆頭とする権力構造となっています。ですから、上位者の指示には基本的は逆らえず、命令を受けたら遂行するしかありません。
しかしながら、上記のような自分ファーストで他者への配慮の無い人間の命令に対しては、形の上では従いますが、主体的に従えているわけではありません。人は、権威に従うのではないのです。その人の人望に魅せられるから心から従えるのだと思います。
企業は、ヒト、モノ、カネ、情報などの経営資源を有効活用し、付加価値を作り利益を生み出して、株主、社員、その他のステークホルダーに利益の一部を分配するとともに、納税をして日本国にも貢献することが責任であると思います。
では、利益を生み出し納税できれば、それで企業の責任は全うできているのか?
私はそうは思っていません。
人間は「モノ」ではありません。人間は「心」を持つ生き物です。その企業で働く人間が、自分の与えられている個性や能力を活かし、また他者の個性や能力を活かし合いながら、自分の人生の主人公感を感じられるようになること、そういう健康経営を目指して初めて真っ当な企業体といえるのだと思います。
私の企業人生も残り少なくなってきました。
自分のできることを愚直にやっていきたいと思っています。
■執筆者プロフィール
武田 宏
日清製粉グループオリエンタル酵母工業にて海外貿易業務に従事。その後同社にて人事制度改革プロジェクトに参加し、「人」という経営資源のあるべき姿について学ぶ。2001年株式会社ニッペコに入社。海外企業(独)との資本・業務提携のプロジェクト遂行、人事・経理・情報システム等の管理部門責任者を経て、現在は人材育成・社員相談業務を主とするキャリア支援室室長を務める。合わせて社長付として経営補佐の任も担う。
支援人事、キャリア開発支援に携わり15年が経過。現職の傍ら、現在放送大学大学院にて臨床心理課程で「心」を学び、組織視点だけでなく個人視点での成長にコミットできるよう研鑽を重ねている。2020年よりタラントディスカバリーラボ代表、㈱セイルコンサルタントとして、キャリア開発支援活動を開始。