本コラムでは、当社コンサルタントの武田が、「キャリアエッセイ~自分のミッションを求めて~」と題し、キャリアを考える上でのヒントをご紹介させていただきます。今回は、「転機とは」をテーマにお伝えします。
転機とは
ご存知のように、キャリア論の中では、ナンシー・シュロスバーグが「人生上の転機(トランジッション)」について提唱されています。
シェロスバーグは、人生の中で遭遇する転機を、
「期待していたことが起きたとき」
「予想していなかった出来事が起きたとき」
「期待していたことが起こらなかったとき」
という3つに分けて考えています。転機とは、決して予測できるものではなく、人それぞれがその人独自の転機を経験しているとしています。
そして転機に対処する手段として、①状況に対する理解、認識 ②自分の経済的、社会的、心理的状態 ③周囲の援助の可能性 ④対応戦略 の4つが考えられ、それらの組み合わせでいかに対応するかを説いておられます。
入学、入社、結婚、離婚、引っ越し、病気、昇進、転勤、転職、子供の入学や卒業、出産、身近な人との死別、定年、自己事件の遭遇など、様々なその人独自の転機が人生の上では起こります。
こう考えると、「転機とその対処」というのは、ポジティブなものもネガティブなものもありますが、結局は「ストレスとその対処」という考え方に近いものかと思います。
上記に対して、発達心理学の視点から、人間の発達段階に応じて共通した人生ステージにおける転機がある、という見方もあります。この考え方によれば、児童期のあとには青年期が、青年期の後には壮年期が来て、それぞれのステージで真剣に取り組まなければならない課題がある、ということです。
ただ、単純に時間軸だけで、人生ステージは小説のように転機の繰り返しがくるのでしょうか。ウィリアム・ブリッジスは、「転機の始まりは、何かが始まるときではなく、何かが終わるときである」と言っています。つまり、しっかりと終わらせるべきことを終わらせなければ、次のステージに入る資格がない、ということです。
成すべきことを成し、初めて次の世界へ旅立つ切符をもらえるのでしょう。私自身、しっかり考えてみたいと思います。
■執筆者プロフィール
武田 宏
日清製粉グループオリエンタル酵母工業にて海外貿易業務に従事。その後同社にて人事制度改革プロジェクトに参加し、「人」という経営資源のあるべき姿について学ぶ。2001年株式会社ニッペコに入社。海外企業(独)との資本・業務提携のプロジェクト遂行、人事・経理・情報システム等の管理部門責任者を経て、現在は人材育成・社員相談業務を主とするキャリア支援室室長を務める。合わせて社長付として経営補佐の任も担う。
支援人事、キャリア開発支援に携わり15年が経過。現職の傍ら、現在放送大学大学院にて臨床心理課程で「心」を学び、組織視点だけでなく個人視点での成長にコミットできるよう研鑽を重ねている。2020年よりタラントディスカバリーラボ代表、㈱セイルコンサルタントとして、キャリア開発支援活動を開始。