今回は、キャリア全体像の4つの視点(1.個人視点×形からのアプローチ、2.個人視点×心からのアプローチ、3.集団視点×形からのアプローチ、4.集団視点×心からのアプローチ)から、「3.集団視点×形からのアプローチ」として、「リーダシップの醸成」について考えていきたいと思います。
リーダーシップの醸成
キャリア開発を考える上で、組織内でのリーダーシップのあり方がとても重要な要素になります。
さて、「リーダー」というのは最初から存在するものなのでしょうか。対象が一人ではリーダーの存在は必要ありませんから、対象は二人以上の集団(組織)の中にいる人となりますね。
集団の変遷について考えてみましょう。
個人は集団の中で、各々自分のカラーを発揮しながら目的・目標に向かって進むわけですが、構成員の動機や価値観、能力の違いなどから、集団は成立したあとに「混乱」の時期を迎えます。その混乱期を経て「成熟」していくのですが、そういう他者との様々な交わる機会に基づいてお互いを理解し、リーダー役割を自他ともに自覚していくようなプロセスがあるのだと思います。リーダーは初めからリーダーだったのではなく、リーダーに変わったのです。
これはリーダーシップ理論の上でも同様なことが言えそうです。
初期のリーダーシップ論は、「リーダーとはその資質を持っている人がなるもの」という理論が主流でした。一種の「強さとか適性」みたいなものが重視されていたわけです。けれども最近では、「その時々の「人」と「環境」に応じて適切な役割が果たせる人」という理論がトレンドとなり、「柔軟さと多様性への理解」がリーダーの重要な要素になってきています。
リーダーシップというのは、一言でいえば「対人影響力」です。ですから、「権威」はリーダーシップを発揮できる一つの要素ではありますが、権威だけでは十分ではありません。人は最終的には、「権威」ではなく「人望」によって動くからです。ですから、リーダーシップは役職者だけが発揮するものではなく、一般社員でも新入社員でも発揮できるわけです。
ここで「権威」や「影響力」の話が出ましたので、皆さんが役職者であるならぜひとも覚えておいていただきたいことがあります。
みなさん(特に役職者)は「ゴジラ」である、ということを忘れないでほしいのです。ゴジラは身体が大きく力があって、しっぽも長いです。皆さんが右を向けば、しっぽは遠心力で左後方にある建物を一気に壊してしまいますし、左を向けばその逆に右後方にある建物を壊してしまいます。自分は壊すつもりが無くても、左右を見るだけで結果として建物は破壊されていくわけです。
組織においても同じで、役職者の影響力は大きいのです。物事の方針決定にしても人事評価にしても、本人にそんな大きな意図がなかったとしても下位者たちはみなさんの言動に敏感に反応してしまいます。どうかこのことを覚えて、常に下位者から見られているという意識を持って執務していただきたいと思います。
またリーダーは、自分への謙虚さと厳しさを持つことも大切です。自分に甘く部下に厳しいリーダーは、すぐにその甘さを部下に見抜かれてしまいます。自らを律する、つまり自律できることがリーダーの基本的条件であるといえると思います。
■執筆者プロフィール
武田 宏
日清製粉グループオリエンタル酵母工業にて海外貿易業務に従事。その後同社にて人事制度改革プロジェクトに参加し、「人」という経営資源のあるべき姿について学ぶ。2001年株式会社ニッペコに入社。海外企業(独)との資本・業務提携のプロジェクト遂行、人事・経理・情報システム等の管理部門責任者を経て、現在は人材育成・社員相談業務を主とするキャリア支援室室長を務める。合わせて社長付として経営補佐の任も担う。
支援人事、キャリア開発支援に携わり15年が経過。現職の傍ら、現在放送大学大学院にて臨床心理課程で「心」を学び、組織視点だけでなく個人視点での成長にコミットできるよう研鑽を重ねている。
2020年よりタラントディスカバリーラボ代表、㈱セイルコンサルタントとして、キャリア開発支援活動を開始。