次世代型の組織形態として、注目が集まっている「ティール組織」。近年、従来と一線を画す斬新さと、時代に合わせた考えで導入を検討している企業が増えています。この記事では、ティール組織における概念や実現に向けたポイントをわかりやすく解説します。
1. ティール組織とは
ティール組織とは、従来の企業側や上司が指示する経営ではなく、所属するメンバーが主体となり目標達成に向けて行動する組織形態のことです。2014年にフレデリック・ラルー氏が執筆した著書「Reinventing Organizations」で紹介され、大きな注目を集めました。著書の中でラルー氏は、従来のマネジメント手法では組織にとって悪影響を及ぼす可能性があると指摘しており、近年新しい組織概念として認知されています。
2. 5つの組織形態
ラルー氏は、過去から現在までの組織の在り方を、5つの色を使って表現しています。それぞれの特徴を踏まえて、わかりやすく説明します。
2-1. レッド組織
レッド組織は、リーダーからのトップダウンによるマネジメント組織のこと。社員は、指示が出てから行動するため、不安が少ないことが特徴的です。但し、個人での目標意識を持ちづらく、突発的な事柄に対して柔軟性に欠ける面もあります。
2-2. コハク組織
「軍隊」と比喩されているコハク組織ですが、社会的な地位に則った組織のことを指します。レッド組織より役割分担が明確にされていて、情報の統率に強いことから長期的な運営に向いています。しかし、階級によって発言力や決定権が異なるため、社員の競争率は低い傾向にあります。
2-3. オレンジ組織
オレンジ組織は、コハク組織同様に階級による格差はありますが、厳格ではないため、評価に応じて出世が可能です。以前の組織形態と比べると、社員同士の熾烈な生存競争が起こりやすく、高いモチベーションでメンバーは業務を遂行します。結果を出すために働き続ける姿から「機械」と比喩されています。
2-4. グリーン組織
以前までの結果主義の目線を、社員の特徴や強みといった個性に焦点を当て、人の成長を重視した形態をGreen組織と呼びます。但し、メンバー同士の意見交換を行いやすい反面、方向性を合わせるには時間を要する傾向があります。
2-5. ティール組織
ティール組織は従来の概念とは一切異なり、「組織の目的」以外に細かなルールは存在しません。そのため、社員を細胞に例え、企業を一つの生命体と比喩しています。社員一人ひとりの意思と自由な働きによって、大きな成果に繋がるとされており、さらなる組織の進化に繋がる大きな起点となる経営形態となっています。
3. ティール組織のメリット
ティール組織におけるメリットは、大きく以下の2つが考えられます。
- 業務意識改善と主体性の向上
- 業務効率を上げることができる
3-1. 業務意識改善と主体性の向上
ティール組織を実行した場合、社員の業務意識が改善され、主体性を持った行動に繋がります。なぜなら、従来の形態では上司の指示に従って業務を遂行するため、最終的な目標が見えづらく、自主的に業務について考える機会が減るからです。しかし、ティール組織の場合は社員一人ひとりに意思決定権があり、個人の決定が企業の成果となるため、モチベーションも高く自主的な働きが期待できます。
3-2. 業務効率を上げることができる
従来の経営モデルであれば、一つの業務を遂行するにあたり、上司との「報告・連絡・相談」といったコミュニケーションが必要です。しかし、ティール組織では上下関係がなく個人が主体となっているため、スピーディーに業務を開始することができ、業務効率を上げることに繋がります。 また、不測の事態が起きた場合でも、当事者が決定を下せるため、変化に強い柔軟性も期待できます。
4. ティール組織のデメリット
ティール組織には、以下のようなデメリットもあります。
- 業務における管理が難しい
- 成功事例が少ない
4-1. 業務における管理が難しい
ティール組織では、上司から部下といった明確な指示系統の流れがなく、個人が各々業務における進捗管理をしなければいけません。そのため、企業側は現時点の成果が分かりづらく、業務管理が難しくなります。
4-2. 成功事例が少ない
ティール組織の導入にあたり、懸念される要因として、概念の認知から年数が経っていないことによる成功事例の少なさが挙げられます。なぜなら、企業は一朝一夕で成果を上げることができないからです。成功事例が多いほど、リスクを回避でき成功への近道に繋がるでしょう。
5. ティール組織実現に必要な3つのブレイクスルー
ティール組織を実現する上で欠かせない3つのブレイクスルー(突破口)があります。こちらで、詳しく解説します。
5-1. セルフマネジメント(自主経営)
ティール組織では、属する全ての社員に意思決定権を付与しているため、メンバー全員が経営者としての自覚と責任を負う必要性があります。また、役割分担がないため、人事や営業といった様々な業務も、時には請け負わなければいけません。 業務負担が増えるリスクはありますが、従来の固定化を廃止することで、目標に向けて新しいルールや問題の改善が必然的に行われ、結果的に業務が効率化します。革新的な概念のティール組織には、セルフマネジメントは必要不可欠だといえます。
5-2. ホールネス(全体性)
ティール組織の実現には、メンバー全員がフラットにお互いを尊重しあえる環境が必要です。なぜなら、従来の地位による格差がある組織では、上司の期待に沿うことが評価に繋がりやすく、社員が能力や特性を隠す傾向があるからです。ティール組織では自身に決定権や責任があるため、弾圧されることはなく、本来隠していた個性を最大限に発揮することが可能です。
5-3. エボリューショナリーパーパス(存在目的)
個人に主導権を壌土するティール組織では、メンバー全員がエボリューショナリーパーパスを理解し、時代に合わせて柔軟に変更する必要があります。例えば、従来の在り方では組織のビジョンは固定されており、時代のニーズによって結果が変わる可能性があります。変化の激しい現代で生き抜くためには、定期的に存在意義を見直すことが大切です。
まとめ
この記事では、ティール組織の概念や実現に向けたポイントをお伝えしました。組織は一人ひとりが高い成果を出すことで、大きな結果へと繋がります。多様性が尊重され、変化の激しい現代社会では、ティール組織のような自由度の高い経営形態が求められているのではないでしょうか。