仕事で困難にぶつかった時、個人の力で乗り越えるか、それとも心が折れてしまってやる気をなくしてしまうか、あなたはどちらでしょうか。「困難を乗り越えて結果を出せる人は、何が違うのだろう」と考えたことのある方もいらっしゃるかもしれません。
困難を乗り越えられる人は、ストレス耐性が強く「レジリエンスが高い人物」だともいえるでしょう。
今回は、あまり耳慣れないレジリエンスについて、その鍛え方とともに紹介します。
レジリエンスとはなにか?
レジリエンスとは、日本語にすると「しなやかさ」「回復力」「弾力性」を意味します。もともとは物理学の用語で「外力によるゆがみを跳ね返す力」という意味で使われていました。つまり押しつぶされたり踏まれたりしたとしても、すぐに立ち直り復活するイメージです。
そのレジリエンスという言葉はビジネスの現場では「困難にぶつかってもすぐに立ち直り、しなやかに復活する力」と定義されています。近年は予測困難で変化の激しいご時世となっており、それはビジネスの現場も例外ではないため、それに立ち向かうためのレジリエンスの強化が求められています。
逆境や困難にぶつかっても素早く立ち直る「打たれ強さ」を身につけることで、個人の精神面にも良い作用をもたらし、ビジネスにおいても好ましい結果がもたらされます。
レジリエンスを鍛える目的
レジリエンスを鍛える目的のひとつに、社会人のメンタルヘルスの問題があります。仕事の量・質・人間関係で悩み、強いストレスに耐え続けた結果、心身に不調をきたし「うつ」と診断される人が増えています。メンタルの不調で会社を休む人が多いと当然業務にも支障をきたしますし、なにより本人にとってもいい状態とは言えません。ストレス社会に生きるビジネスパーソンはストレスと上手に向き合い、メンタルを回復させる力を身につけなくてはなりません。
困難・問題が起きても素早く冷静に対処できるようになる
雰囲気の良い職場は離職率も低いです。仕事をするうえでトラブルや問題が起きたとき、レジリエンスの高い社員が多いことで慌てず冷静に対処できる人たちで満たされ、ギスギスした空気やトゲのある言い方をする人が減ることになります。その結果、良い空気が職場に流れ、仕事もしやすくなるでしょう。
また、レジリエンスの高い組織は組織単位でトラブルが発生した際にもすぐに立ち直ることができます。例えば、自然災害・パンデミック・サイバー攻撃など事業の存続が危ぶまれる不測の事態が生じた場合でも、あらかじめ定められたBCPマニュアル(事業継続計画)に基づき、素早く通常業務にもどれるでしょう。このように、レジリエンスを高めることは、組織にも組織で働く社員にとっても必要不可欠なことなのです。
新人や若手社員の早期離職・メンタル不調の防止
イマドキの新人・若手社員の特徴として、たった一度の失敗や上司からの叱責で心が折れ、メンタル不調をおこして早期退職してしまう人が多いことが問題になっています。子どものころからほとんど叱られたり失敗したりすることがないまま社会人となる人もいるでしょう。そのような人が初めて仕事で失敗し、その失敗をとてつもなく大事に捉えてしまうと、自己肯定感を高められなくなってしまいます。組織にとってもせっかく採用した若手人材がすぐ辞めてしまう事は大きな損失です。また周りの目を気にしすぎてしまい自分と他人を比較してしまうことはその若手にとっても自らをストレスのドロ沼にはめこんでしまう行為です。適切な自己肯定感を保つためにも、レジリエンスを鍛えることは有効です。
生産性の向上にも繋がる
全ての職種において逆境に陥ったときこそ、生産性アップのチャンスです。まさに「ピンチをチャンスにかえる力」があるかどうかでその後が決まるのです。レジリエンスが高い人は逆境でもすぐにモチベーションを回復させ、やるべきことを淡々とこなし生産性を落としません。むしろ、逆境を糧に自分を成長させるチャンスだと捉えることができるのです。レジリエンスが低い人は逆境に弱くトラブルを回避しようとしてしまう傾向があるため、神経をすり減らしてしまって自分が疲弊し、生産性が落ちてしまうという悪循環に陥ります。
レジリエンスが高い社員が多い組織は仕事や人間関係に不満をもつことが少ないため、士気を高く保つことができます。そのため、円滑に仕事がまわり生産性が向上するのです。
レジリエンスを鍛えるためにできること
1.自己効力感を強化しよう
自己効力感とは、自分がおかれている状況の中で目標を達成したり目標の実現のために、自分の能力やスキルを高めることにより得られる充足感です。自己効力感を高めるためには「自分の力でやり遂げた」という成功体験を積み重ねることが大切です。
2.目標やビジョンを設定しよう
自分は何を重要視するのかといった価値観を見直したり、将来の具体的な目標を考えることもレジリエンスの強化につながります。特に、自分の価値観やビジョンが仕事に結びついてキャリアにも繋がると、仕事上のレジリエンスも高まります。
3.人間関係の構築力を高めよう
まず、自分の周囲の人との人間関係を見つめなおしましょう。自分が他者とどのように向き合っているか分析し、理想の人間関係とはどのようなものか考えましょう。その後で自分の対人スキルを鍛えること、例えば人の話にキチンと耳を傾けているか・適度に自己主張しているか・他人の価値観を認めているかなどに目を向けることが大切です。そのようなことができていると、どんな環境に変わっても良い人間関係が築けるでしょう。
まとめ
現代のような情報過多社会においては何事においてもスピードが求められます。ストレスと上手く付き合っていけるか否かによって社会人生活が左右されるといっても過言ではありません。レジリエンスは後天的に鍛えることが可能な能力です。ときにはプロによる研修制度なども利用し、レジリエンスを鍛えるための共通のスキルを社員に浸透させることは、組織の連帯感を高めることにも繋がります。それによって生産性も向上し、組織全体の利益を増やすことにもつながるでしょう。