本コラムでは、当社コンサルタントの武田が、「キャリアエッセイ2~自分のミッションを求めて~」と題し、キャリアを考える上でのヒントをご紹介させていただきます。今回は、「我儘に生きる」をテーマにお伝えします。
我儘に生きる

人間は、楽しみよりも苦しみや恐れの方が強く感じる、と言われています。
さらに言えば、人間よりも下等な動物は、楽しみという感覚はあまりないのかもしれませんが、恐れについては本能的に持っているようです。外界で何かに襲われて生命を絶たれることの無いよう、警戒するのは当然のことと思います。
過去に痛い思いや怖い思いをした経験を脳は忘れないのです。
ですから、嫌なことや恐怖を繰り返し体験すると、毎回脳がそれを思い出し、何とかダメージを少なくしようと過度に考えたり
防衛機制を働かせて、自分を守ろうとします。
まるで、傷か治りかけた瘡蓋をもぎ取られ、また身体が瘡蓋を作ろうとするように、です。
でも、そういう辛い体験が積み重なったり、またその世界から逃れることが難しいという環境に置かれると、人間は学習性無力感を感じるような諦め状態になったり、あるいはうつ病を発症して、自ら神経回路のブレーカーを落として過剰電流でショートすることを防ごうと自己防衛をし始めます。
「他者から評価されたい」「役割を全うしたい」という気持ちは、社会生活をする上で大切なものですが、
それを自己欲や過剰な責任感から考えてしまうと、上述したように自己制御できなくなってしまいます。
「我儘に生きる」とは、「自己愛の中に生きる」こととは違います。
自分に課せられた十字架(役割とか使命のこと)は他者に背負わせてはいけません。けれども、他者の十字架まで背負う必要はありません。
自分自身の天分(=体力、知力、適性)を正しく見極め、他者がどんな評価をしようとも、それには動じず、天が与えてくれた使命に呼応し、時には休みながら自分のペースで自分の十字架を背負っていくことを、改めて考えたいと思います。
他者から見てその歩みが不器用に見えたとしても、それを過度に気にする必要はありません。
会社内の仕事分担であれば、決められた納期までに仕事を完了させることは必要となってきますが、自分の人生に与えられた生きる意味を問う作業に対しては、他者の真摯なアドバイスであっても、それらは参考意見の一つしかないのだと思います。
試行錯誤しながらもこのような自分軸を作っていくことで、辛い、怖い体験をしたときでも、賢明な自己制御ができるようになるのだと思います。