本コラムでは、当社コンサルタントの武田が、「キャリアエッセイ2~自分のミッションを求めて~」と題し、キャリアを考える上でのヒントをご紹介させていただきます。今回は、「健全な保守とは何か」をテーマにお伝えします。
健全な保守とは何か
会社にしてもまたクラブチームにしても、組織の運営には色々な困難がつきものです。それは、メンバーそれぞれが異なる生き方や価値観を持っているからであり、メンバー全員が納得するような運営はありえないからです。
一方「組織」は、存在目的を持っています。現状の運営がその目的にそれなりに沿い、また組織に対する個人の期待も方向性として合致し、組織を取り巻く環境も個人が受け入れられる程度であるなら、納得感が100%でなくても個人はその組織に所属して活動していく、という現実的な妥協が通常のあり方なのではないかと思います。
国のレベルでも同じだと思いますが、組織運営は過去からの伝統や文化に大きく影響されます。たとえその時点で正しいと思われる施策があったとしても、過去から現在までの流れに大きな乖離がある施策であるなら、メンバーにとっては中々受け入れられるものではありません。それは政治でいえば「革命的な革新勢力」なのでしょうし、会社でいえば「過去否定の超未来志向」なのかもしれませんが、人間は、よほどの危機的な状況に陥らない限りは、たとえ正解かもしれないと思っていても、そのような極端な方法には足が向かないものです。
人間は、刺激を「異物・未知のもの」と認知すると、過去の自分の保持してきた概念と照らし合わせ、その刺激を「NO」として排除するか、その刺激を取りこんで新たな概念として形成するかを思考します。正しいか正しくないかを思考するよりも、自分にとって安全か否か、あるいは自分にとって有利か不利かで考える度合いの方が大きいのです。
その点を過小評価しすぎて、リーダーが自分の考える正義を振りかざしてしまえば、有権者からも支持されないし、会社でいえば人望を失うということになりかねません。 リーダーになる人間には、そういう人間独特の思考を踏まえて、新たにチャレンジしようとしていることの必要性を他者に共感してもらえるように献身的な努力をすること、また変化スピードについても、メンバーにとって安心できる概念変化が起こるよう「健全な保守」的な視点を持つことが必要かと思います。
リーダーは、自分が悪者になっても、メンバーにとって厳しく正しい決断をしていかなければならない時もあるでしょう。でも、メンバーに対する自分の言動がメンバーの心にどのように伝わるかについて鈍感な人間は、少なくてもリーダーは失格なのだと思います。
「健全な保守」とは、そこに共感力をもって事をなす力なのだと思います。