本コラムでは、当社コンサルタントの武田が、「キャリアエッセイ~自分のミッションを求めて~」と題し、キャリアを考える上でのヒントをご紹介させていただきます。今回は、「ロゴセラピーの授業を通じて」をテーマにお伝えします。
ロゴセラピーの授業を通じて
先日、臨床心理士の先生に定例カウンセリングを受けましたが、この1年を振り返り、生じた出来事を自分の中でどのように捉え消化してきたか、それを思っていたよりもナラティブに報告することができで、自分としては落ち着いた気持ちになりました。
ナラティブとは、直接的には「語り」であり、「語られたもの」のことをいいます。具体的には、自分の断片化した経験をつなぎ合わせ、他者に語ることを通して、再度組み立て直す自伝的作業のことであり、それによって新たな意味づけがされることです。
人間は、過去の出来事を変えることはできませんが、過去の出来事に対する認識を変えることはできます。自分の生き方の琴線に触れるような事象をつなぎ合わせることにより、新たにポジティブに見えてくるものを見ようとすることこそ、本当の学習なのだと思います。
前回の大学院予備校の授業で、「ロゴセラピー」について学びました。V.フランクルが提唱したこの「ロゴセラピー」は、人間が自らの「人生の意味」を見出すことを援助する心理療法のことです。
私たちは、ともすると日々の生活の中で社会的役割に過度に振り回されて、本来与えられた自分の人生の意味を問うことを忘れてしまいます。私も典型的なその一人であるのですが、このような自分のミッションに対する「関心の喪失」や「主体性の欠如」が起こると、神経症を発症するとの危惧をフランクルは投げかけています。
私自身、この1年を振り返り、この「意味への挑戦」を怠っていたように感じました。特に精神的にも迷い、諦め、他責思考が渦巻いている時期は、どうしても物事の因果を考えてしまい、存在や意味を問う作業を放棄していたことに気付かされました。
でも、天から与えられていると感じている自分のミッションを考え続けてきて、最終的には現在の環境でも何か一つでもそのミッション実現ができるのではないかと考え行動に移してから、自分を取り巻く環境も少しずつ変わってきたようにも感じています。ナラティブに捉え、全面的にではありませんが自分の存在の意味を肯定出来るように変わってきたと感じます。
ロゴセラピーの授業を通して、そんな自分自身を振り返る機会を与えていただきました。
■執筆者プロフィール
武田 宏
日清製粉グループオリエンタル酵母工業にて海外貿易業務に従事。その後同社にて人事制度改革プロジェクトに参加し、「人」という経営資源のあるべき姿について学ぶ。2001年株式会社ニッペコに入社。海外企業(独)との資本・業務提携のプロジェクト遂行、人事・経理・情報システム等の管理部門責任者を経て、現在は人材育成・社員相談業務を主とするキャリア支援室室長を務める。合わせて社長付として経営補佐の任も担う。
支援人事、キャリア開発支援に携わり15年が経過。現職の傍ら、現在放送大学大学院にて臨床心理課程で「心」を学び、組織視点だけでなく個人視点での成長にコミットできるよう研鑽を重ねている。2020年よりタラントディスカバリーラボ代表、㈱セイルコンサルタントとして、キャリア開発支援活動を開始。