本コラムでは、当社コンサルタントの武田が、「キャリアエッセイ~自分のミッションを求めて~」と題し、キャリアを考える上でのヒントをご紹介させていただきます。今回は、「そっと背中を押してくれたこと」をテーマにお伝えします。
そっと背中を押してくれたこと
先日、ビジネスを学ぶプログラムの一環で、若い大学生に向けたミニフォーラムが開催されました。パネリストは3名、その中には現職の政治家の方もいらっしゃいました。
テーマは「夢を実現するためにいかに物事に関わるか」というもので、その政治家は「行き詰まったときにこそ、陰徳を積むことが大切ではないか」というお話をされていました。
政治家は常に市民から厳しい目で見られることが多く、かつ千差万別の立場の市民の声をどのように代表して政策に反映させるか、答えのない問いに常に向かい合わなくてはなりません。ある面では、汚い裏の世界や個人的なゴシップばかりが先行して、その手の話ばかりが一人歩きしてしまうケースもあり、一般人以上に自分自身を厳しく律しなければならない立場かとも思います。
私が思うに、社会的な貧困や差別など困ったことに敏感で共感力を持っていなければ、政治家のように立志しようという動機につながりませんから、政治家は普通の市民ではできない「行動」のレベルまで、自分を国家のために捧げようと思われていると私は感じています。政治家の行動を芸能人のように批判をするのは簡単ですが、私たちができないことをしようとしていることも事実だと思います。
当ミニフォーラムの中でその政治家は、「夢を実現するためには、そこに明確な動機が必要である」ともおっしゃっていました。陰徳を積む精神、そしてしっかりと動機を見つめ直し、そこに自分を重ね合わせていくことの大切さも教えてくれました。
どうしても辛くて、他者に頼るときもあっても良いのでしょう。
でも最終的には、自分自身で踏み出す一歩が大切で、その一歩を踏み出したからこそ、いままで見えなかった世界が少しづつ見えてくるのだろうと、そのように思いました。
「カリスマを必要とする社会こそ危ない社会である」と思います。
未来に向けて社会の大きな課題を解決するために行政の新しい仕組みを作っていくこと、それは政治家の仕事かもしれませんが、私たちは傍観者で良いわけではありません。私たち市民も身近にできることを行うことを通して、周囲や環境に働きかけることが必要であると、その政治家は教えてくれたように感じました。
私にとっては、そっと背中を押してくれた出来事でした。
■執筆者プロフィール
武田 宏
日清製粉グループオリエンタル酵母工業にて海外貿易業務に従事。その後同社にて人事制度改革プロジェクトに参加し、「人」という経営資源のあるべき姿について学ぶ。2001年株式会社ニッペコに入社。海外企業(独)との資本・業務提携のプロジェクト遂行、人事・経理・情報システム等の管理部門責任者を経て、現在は人材育成・社員相談業務を主とするキャリア支援室室長を務める。合わせて社長付として経営補佐の任も担う。
支援人事、キャリア開発支援に携わり15年が経過。現職の傍ら、現在放送大学大学院にて臨床心理課程で「心」を学び、組織視点だけでなく個人視点での成長にコミットできるよう研鑽を重ねている。2020年よりタラントディスカバリーラボ代表、㈱セイルコンサルタントとして、キャリア開発支援活動を開始。