本コラムでは、当社コンサルタントの武田が、「キャリアエッセイ~自分のミッションを求めて~」と題し、キャリアを考える上でのヒントをご紹介させていただきます。今回は、「出来ない社員の定義」をテーマにお伝えします。
出来ない社員の定義
会社によって、ハイパフォーマーの定義は異なってくると思います。たとえ職務態度に波があったとしても、そのポストに見合う成果を確実に出せばハイパフォーマーといわれる会社もあれば、結果はもちろんであるけれども、仕事遂行や周囲との協働の姿勢が重視される会社もあると思います。
ただ、決められたルーチン業務をこなすだけの社員の集まりでは、この変化の激しい時代に、企業体として現状維持すら難しいでしょう。ルーチン業務は、過去から現在にかけて、その視座で適切と想定された仕事のやり方に他ならないからです。
ここで「成果が出にくい人」について考えてみましょう。そういった方には以下のような傾向があると考えます。
1. 主体性が無い
2. 仮説を持たない
3. やったあと検証しない
4. 結果から学ぶことをしない
5. 自分の今までの思考行動を変える勇気を持たない
1の主体性の部分は、「主人公感」や「責任感」といってもいいのだと思います。自分の損得だけを考えているようなタイプは、社会人として働いていくことは難しいでしょう。
仕事は誰かがやらなければ穴が空いてしまいます。極力自分の責任を負いたくないために、勝手に自分で仕事の線引きをして棚上げしてしまうような、そういう社員のことだと思います。プロ意識の欠如といってもいいでしょう。
一方、環境が逆風であっても、しっかりと仕事と人に向き合い、自責のスタンスで仕事に取り組む姿勢を持っている人には、自然と他者の信頼が集まります。
2~4の部分はPDCA思考のことを言っていますが、小さなサイクルでも自主的にサイクルを回し、周囲も巻き込んで検証結果からの学びを行うようなスタンスが求められるわけです。
そして一番大切なのは5番目だと思います。周囲との協働作業で仮説検証プロセスを経た際、自分が今まで考えてきた基準や価値観が、必ずしも正しいものではないと感じたとき、勇気を持って自分を変えられるかどうか。
これは、1番目の話ともリンクしています。「変化」は、基本的には人間にとって怖いものですし、限られた資源の中で効率よく仕事をこなしていくには、変化はストレスにもなります。でも、私たちは変化し成長していかなければ、企業体としても、また一人の人間としても存続できませんね。
「自分(=現状)が正しい」「他人(=新しい考えや仮説)が間違っている」と言って、常に過去のやり方や古き自分に郷愁を持って変わらない人間は、そこで成長が止まってしまいます。
クランボルツ博士のプランドハプンスタンス理論にもあるように、幅広い好奇心を持ち、取り組んだら持続する胆力を持ち、物事を柔軟・楽観的に考え、時には冒険心ももってアクセルを踏み込んでチャレンジしてみる・・・そういう仕事の仕方を心がけたいものです。
そしてこれは、仕事に限らず、人としての人生の生き方も同様だと思います。
■執筆者プロフィール
武田 宏
日清製粉グループオリエンタル酵母工業にて海外貿易業務に従事。その後同社にて人事制度改革プロジェクトに参加し、「人」という経営資源のあるべき姿について学ぶ。2001年株式会社ニッペコに入社。海外企業(独)との資本・業務提携のプロジェクト遂行、人事・経理・情報システム等の管理部門責任者を経て、現在は人材育成・社員相談業務を主とするキャリア支援室室長を務める。合わせて社長付として経営補佐の任も担う。
支援人事、キャリア開発支援に携わり15年が経過。現職の傍ら、現在放送大学大学院にて臨床心理課程で「心」を学び、組織視点だけでなく個人視点での成長にコミットできるよう研鑽を重ねている。2020年よりタラントディスカバリーラボ代表、㈱セイルコンサルタントとして、キャリア開発支援活動を開始。