本コラムでは、当社コンサルタントの武田が、「キャリアエッセイ~自分のミッションを求めて~」と題し、キャリアを考える上でのヒントをご紹介させていただきます。今回は、「組織人として考えること」をテーマにお伝えします。
組織人として考えること
組織とは、「特定の目的を達成するために、専門的な役割を持った部門で構成されている集合体のこと。」と定義されています。
(引用:ASCII.jpデジタル用語辞典「組織」, コトバンク(2022-11-15))
言葉の上ではこのように定義されていて、プロフェッショナル人材が自分の領域の役割を果たすことで、目的達成がいとも簡単になされるように感じますが、現実的には、構成員各々の持っている能力も異なりますし、目的達成のための手段や考え方が異なることが多いと感じます。
「それが多様性であり大切だ」というのは容易いですが、実際の組織運営の前線では、この差異から生まれてくる様々なコンフリクトに対応していくことは、大きな課題でもあります。
私が感じることとして、このようなコンフリクトが生じた場合、意見の異なる他者に対し、自分が考える正義をどのように伝えて、理解してもらえるように行動するか、その姿勢こそ一番大切なのではないかということです。
誤解を恐れずに申し上げれば、正義の基準は人の数だけあるため、最終的には「正しいか正しくないか」ということではないのです。他者が考えた正義に対し、できる限り共感し、少なくても受け止め、理解したことを伝え、その上で組織にとってどの手段が適切であるかを、一緒になって丁寧に考える姿勢を持つことの方が大切であると私は思います。
そのプロセスがあるかないかで、同じ結論に達したとしても、その後の協力の度合いも全くと言っていいほど異なってくるような気がします。
営利目的のビジネスの世界ですから、コスト、スピードという要素を無視して上記プロセスをたどることはできないのは理解しています。時間も手間もかかります。本当にやろうとしたら、自分も消耗してしまいます。
しかし、その困難さをどれだけやろうとするか、それがリーダーの本懐なのではないでしょうか。
リーダーとは、管理職だけがなるものではありません。新人でも若くても、リーダーシップは発揮できます。
野球のケースで考えると、2アウトランナー2塁。守備側では、何とか得点を防ぎたい、そのようなケースを想定します。
敵の打者が打った球が三遊間に転がっている・・・・
その時、サードはどうするでしょうか、ショートはどうでしょうか、レフトは? ピッチャーは? キャッチャーは?
三遊間ですから、誰かの特定の守備ゾーンではありませんが、誰も自分の守備範囲ではないから責任はない、と言っていたら、ランナーは悠遊と生還してしまいます。
みんなでボールを取りにいく姿勢を持つこと、みんなでバックアップする体制をとることで、チームで極力失点を防ぐことを行うのが野球人なのだと思います。
効率性の追求、生産性の向上は、営利企業にとっては生き残りをかけた命題です。
しかし、人間はすべて経済合理性だけでは動きません。その人間らしさについて考えることを疎かにしてしまったら、その組織は、本当の意味での価値を社会に提供できるのでしょうか。
ビジネスパーソンとしての私の中でも、簡単に答えを出せない問いです。
■執筆者プロフィール
武田 宏
日清製粉グループオリエンタル酵母工業にて海外貿易業務に従事。その後同社にて人事制度改革プロジェクトに参加し、「人」という経営資源のあるべき姿について学ぶ。2001年株式会社ニッペコに入社。海外企業(独)との資本・業務提携のプロジェクト遂行、人事・経理・情報システム等の管理部門責任者を経て、現在は人材育成・社員相談業務を主とするキャリア支援室室長を務める。合わせて社長付として経営補佐の任も担う。
支援人事、キャリア開発支援に携わり15年が経過。現職の傍ら、現在放送大学大学院にて臨床心理課程で「心」を学び、組織視点だけでなく個人視点での成長にコミットできるよう研鑽を重ねている。2020年よりタラントディスカバリーラボ代表、㈱セイルコンサルタントとして、キャリア開発支援活動を開始。