本コラムでは、当社コンサルタントの武田が、「キャリアエッセイ~自分のミッションを求めて~」と題し、キャリアを考える上でのヒントをご紹介させていただきます。今回は、「働くということ~キャリアの講義を通して」をテーマにお伝えします。
働くということ~キャリアの講義を通して
先日、ある大学のキャンパスに伺い、「キャリアモデル・ケーススタディ」という授業に参加させていただきました。この授業は、これからの日本を背負う学生さんのような若い世代が、「自分自身のキャリアというものをいかに考え、作っていくのか」という課題に対し、職場経験や生き方などの点から社会人の話を聴くことを通して考えていただくというものでした。
親子ほどの年齢の差がある学生さんたちを前に30分ほどのスピーチを行いましたが、学生さんたちは真剣に聴いてくれました。またスピーチの後の質問も、ご自身の考えをよく咀嚼しながら発してくれたこと、講演者としてとてもうれしく感じました。
授業が終了してある学生さんから、「仕事で苦しかった時に、どのように考えてそれを乗り越えたのですか?」という質問を受けました。自分をリフレッシュするという事後のストレス対処法のことではなく、どのように心の整理をつけていったのか?という精神作業に関する質問でした。
私は次のように正直に語りました。
「楽しいこともある半面、不条理だと感じることも多い。更に背負いきれない荷物を背負う羽目になることもあり、ここ1年ほどは自分もそういう状態で精神的にも辛い環境だと感じてきた。身体にも影響することもあり、睡眠を確保するために精神科で処方された薬も時々服用してきた。仕事だからやらねばならないことも多いし自分に甘えてもいけないが、でも自分がダメになってしまっては本末転倒になるので、自分が何とか頑張れる範囲を自分なりに自己規定する。そして、それ以上の要求を迫られた場合には、真剣に考え相談はするものの、自力で解決できなければ、どんなに後ろ指を刺されても、組織を去る覚悟で自分と自分の将来を守る、という線引きをし、自分を信じてやってきた。」
人間は動物ですから、いくら社会生活上の正しい基準を理解していたとしても、最終的にはそのものを「好きか嫌いか」で判断し、好きなものはより積極的に求めようとするし、嫌いなものは何とか避けようとするものだと思います。正しいか間違っているかは、好き嫌いをオブラートに包んで示しているようなものだと思うのです。
仕事も全く同じで、生きてきた環境やその人の適性により、人によって仕事の嗜好性は異なります。そのため、絶対量が多かったり不向きな仕事による消化不良の可能性が高い場合は、そのまま継続することには無理がありますね。そうなれば、ある意味「線引き」をせざるを得ないと思います。他者の評価はどうであれ、それは「逃げること」とは違うと私は考えています。
果たして上記の私の回答が、その学生さんの今後の成長にどのように影響するのかは分かりませんが、偽らずに今の自分をそのまま聴いてもらったほうが良いかと考えてお話しさせていただきました。
世の中は「諸行無常」です。ずっと変わらず辛いことが続く、ということもなければ、楽しい世界が永遠に続くこともありません。
転機は自然と来る場合もあり、また線引きして対応するような自分自身で転機を作る場合もあると思います。
自分自身がキャリアの主人公であることにプライドを持って、良い習慣を心がけて、良きキャリアのチャンスは積極的に迎え入れたいと思います。
■執筆者プロフィール
武田 宏
日清製粉グループオリエンタル酵母工業にて海外貿易業務に従事。その後同社にて人事制度改革プロジェクトに参加し、「人」という経営資源のあるべき姿について学ぶ。2001年株式会社ニッペコに入社。海外企業(独)との資本・業務提携のプロジェクト遂行、人事・経理・情報システム等の管理部門責任者を経て、現在は人材育成・社員相談業務を主とするキャリア支援室室長を務める。合わせて社長付として経営補佐の任も担う。
支援人事、キャリア開発支援に携わり15年が経過。現職の傍ら、現在放送大学大学院にて臨床心理課程で「心」を学び、組織視点だけでなく個人視点での成長にコミットできるよう研鑽を重ねている。2020年よりタラントディスカバリーラボ代表、㈱セイルコンサルタントとして、キャリア開発支援活動を開始。