本コラムでは、当社コンサルタントの武田が、「キャリアエッセイ~自分のミッションを求めて~」と題し、キャリアを考える上でのヒントをご紹介させていただきます。今回は、「働くこととは?」をテーマにお伝えします。
働くこととは?
先日ある書籍を読んで、「働くこと」について今一度考える機会を与えられました。
その著者は国内外で幅広くお仕事をされてきたご経験があるとのことで、書かれている内容も面白かったです。
海外でお仕事をされていた際に、ある仕事関係のパーティに出席して会話をしようとしたとき、初めに日本流で名刺を出し仕事の話から入り始めたところ、怪訝な眼で見られたとの経験談を語ってくださいました。
海外、特に欧州では、楽しいパーティの席上では仕事の話などはタブーで、個人的な趣味や楽しかったことを話し合い、また誰かが一人で寂しそうにしていれば、声かけて仲間にいれて場を盛り上げる・・・そういう雰囲気が普通のようです。
労働は労働として割り切って、余暇は余暇で楽しむ、というメリハリをつけるのが当たり前のことなのだそうです。
現在はだいぶ変わってきたとはいえ、自分の健康よりも会社の仕事の方が大切で、家族を犠牲にしても仕事を優先する、というような日本の労働に対する美徳感覚などは、多分欧州のビジネスパーソンからは理解しがたいのでしょう。
私も仕事柄、海外取引先との交信をメールで行うこともありますが、担当者が数週間にわたりバカンスで不在になることも珍しくなく、その間はその仕事が止まってしまいます。日本人の商習慣からするとあまりないことです。でもその一方で、労働生産性の点では、そういう海外企業と日本企業を比べたときに、海外企業の方が高い、という事実は、実感としては理解しがたいものがあります。
「働けば自由になる」「労働こそが自己実現である」という言葉に、私たちはどういう解釈をするのでしょうか。
「労働」を、会社との労働契約の上で提供するものと考えれば、「決められただけやる」というのが普通なのでしょう。何も「自己実現」などという概念を持ち出す必要もないのかもしれません。でも、会社勤めであればそうかもしれませんが、個人事業主(自営業)の方々は、全く違う考えで働いているのではないでしょうか。
私が思うに、利益を上げるために働く、というミニマム目標は当然としても、自分の働いた成果物が社会貢献の一翼となっている、という自負をもっているからこそ、リスクも背負いながら辛いと感じる仕事にも従事できるのだろうと思います。労働が目的なのではなく、その先にある果実、その果実を受け取る人の笑顔、そして次世代への適切なバトンタッチを考えて行動しているかどうか・・・単純にその違いなのだろうと私は思います。
■執筆者プロフィール
武田 宏
日清製粉グループオリエンタル酵母工業にて海外貿易業務に従事。その後同社にて人事制度改革プロジェクトに参加し、「人」という経営資源のあるべき姿について学ぶ。2001年株式会社ニッペコに入社。海外企業(独)との資本・業務提携のプロジェクト遂行、人事・経理・情報システム等の管理部門責任者を経て、現在は人材育成・社員相談業務を主とするキャリア支援室室長を務める。合わせて社長付として経営補佐の任も担う。
支援人事、キャリア開発支援に携わり15年が経過。現職の傍ら、現在放送大学大学院にて臨床心理課程で「心」を学び、組織視点だけでなく個人視点での成長にコミットできるよう研鑽を重ねている。2020年よりタラントディスカバリーラボ代表、㈱セイルコンサルタントとして、キャリア開発支援活動を開始。