本コラムでは、当社コンサルタントの武田が、「キャリアエッセイ~自分のミッションを求めて~」と題し、キャリアを考える上でのヒントをご紹介させていただきます。今回は、「自分の信念の持ち方」をテーマにお伝えします。
自分の信念の持ち方
「信念を持つ」ということは、通常は褒められる表現の一つだと思います。「様々な困難に負けず、自分自身にも負けずに信念を貫いて勝利をもぎ取った」みたいなことに使われますね。
自分に負荷を掛け自分を磨きあげるような姿勢は、美しいものだと私も思います。けれどもその信念が、他者を強引に巻き込む中での自分の歩みだったりするときには、周囲への影響力についても考えなければならないことがあると思います。
チームスポーツもその例にあげられます。例えばバスケットボールの場合でいえば、チームの中で一番技能が優れている人間がポイントを取れるように周囲が合わせるのは原則だとしても、全ての点数を一人のエースが取るわけではありません。エースがおとりとなって仲間にアシストすることができれば、チーム全体の得点能力は更に上がります。「勝利」という信念は、結果として勝利すれば信念は貫いたことにはなるのでしょうけど、同じ勝利でも、どう勝つか、それが大切なのだと思います。
仕事も同じだと思います。仕事は成果を出せなければ、いくら一生懸命やっても中々評価されません。「成果を出す」という信念が大切です。でも、「自分と他者は違うし、どうせわかり合えないのだから自分の都合のよい解釈をし、自分の都合のよい対応をする」という姿勢で自分の信念を貫くとしたら、それは「愚かな信念」であると思わざるを得ないのです。
「自分も相手も心を持っている」という心のあり様を調べるためのテストとして、「誤信念課題」というのがあります。別名はサリーとアンのテストとも呼ばれています。
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ここに「かご」と「箱」があります。
サリーはアンが見ているところで、ビー玉をかごに入れました。
サリーがお散歩に出かけた後、アンはかごからビー玉をとりだして、箱に入れました。
戻ってきたサリーは、ビー玉で遊ぼうとします。
さて、サリーはかごと箱のどちらを見るでしょうか。
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私たちは当然に、『サリーは「かご」を見る』と判断するのですが、3歳児では、サリーの状況や気持ちを読み取ることができず、自分の知っている世界で判断して、「はこ」と応えることが多いとのことです。
でも大人であっても、自己中心の「愚かな信念」に囚われてしまうと、『「はこ」が正しい、なぜなら自分が知っている世界が正義なのだから』と考えてしまうのではないでしょうか。
たまたま最近、こういうことを考えさせられることがありました。自戒を込めつつ、正しく自分の信念を貫きたいと思います。
■執筆者プロフィール
武田 宏
日清製粉グループオリエンタル酵母工業にて海外貿易業務に従事。その後同社にて人事制度改革プロジェクトに参加し、「人」という経営資源のあるべき姿について学ぶ。2001年株式会社ニッペコに入社。海外企業(独)との資本・業務提携のプロジェクト遂行、人事・経理・情報システム等の管理部門責任者を経て、現在は人材育成・社員相談業務を主とするキャリア支援室室長を務める。合わせて社長付として経営補佐の任も担う。
支援人事、キャリア開発支援に携わり15年が経過。現職の傍ら、現在放送大学大学院にて臨床心理課程で「心」を学び、組織視点だけでなく個人視点での成長にコミットできるよう研鑽を重ねている。2020年よりタラントディスカバリーラボ代表、㈱セイルコンサルタントとして、キャリア開発支援活動を開始。