『キャリア』と聞くと、社会での階級や会社での役職などのイメージを持つ方もいるかもしれません。本来の『キャリア』は、ラテン語の「轍(わだち)」が語源で、「仕事人生における連続した経験」や「過去・現在・将来を通した人生全般にわたる生き様」などの意味へ発展しています。つまり、『キャリア』は「自分の人生そのもの」を指す言葉です。
こちらのコラムではキャリアについて、当社コンサルタントの武田が、「自分らしいキャリア開発を考える」と題し、シリーズでキャリア開発に必要な要素をご紹介させていただきます。ここでは、キャリアの全体像をご紹介します。
キャリア全体像
キャリア全体像は4つの視点から構成されています。
4つの視点とは、「個人視点でキャリア開発を考えるのか、集団(組織)視点でキャリア開発を考えるのか」という横軸と、「形からのアプローチか、あるいは心からのアプローチか」という縦軸から考え、1.個人視点×形からのアプローチ、2.個人視点×心からのアプローチ、3.集団視点×形からのアプローチ、4.集団視点×心からのアプローチの4つの象限を意味しています。
横軸:個人視点のキャリア開発、集団視点のキャリア開発
まず横軸ですが、基本的には個人視点のキャリア開発が非常に大切であると考えています。自分自身をよく理解するために内省し、自分の能力面だけでなく、動機や価値観における自分の「利き手」を把握することが大切です。どんな時にドライブがかかるのか、どんな時に躓きやすくなってしまうのか、自分の特徴を知ることが大切です。そして正しい学習を積み重ねていくこと、またそのためのエネルギーや柔軟性の大切さについて学びます。
一方私たちは、通常は何等かの集団(組織)に属していますから、集団(組織)への適応なしには社会生活を送ることはできません。他者の存在が周囲にあるということは、自分の能力や思考に合わない他者との共存が必要で、その共存の仕方によって、個人が活きる場合もあれば、活きずに最悪の場合には心の病気になってしまったりしまったりします。集団(組織)視点のキャリア開発では、集団の中で個がいかに活きるのか、それを考えていきます。
縦軸:形からのアプローチ、心からのアプローチ
次に縦軸ですが、前述の通り社会生活をしていく上では、組織のルールや文化などへの適応が大切なのですが、その集団(組織)がどのようなルールを持って運用しているのかによって、適応度合いも変わってきます。例えば、毎日夕飯も取らずに夜11時まで黙々と残業することが会社の文化であったら、普通の人間は仕事を継続することが難しいですね。また「頑張った人もそうでない人も、同じ年齢なら同じ給与です」と言われたら、働く気が起きませんね。このような、「形」となるルールや文化はとても大切であると思います。
また、制度や労働条件などの形はそこそこ整っていても、納得できる目標、そしてそこに心理的な安心や暖かい支援があるかないかで、人間のやる気は大きく変わってきます。人間は期待されるから、それを自分の使命として役割を果たそうとするものです。運動会のチーム対抗リレーの例でいえば、チームの勝利という目標とそれを達成しようとする仲間がいるから頑張れるわけで、ただトラックを走りなさいと言われて走る人はいないでしょう。
まとめ
この横軸、縦軸を組み合わせた、4つの象限(1.個人視点×形からのアプローチ、2.個人視点×心からのアプローチ、3.集団視点×形からのアプローチ、4.集団視点×心からのアプローチ)における、それぞれの要素を次回以降紹介していきます。
これらの要素について一つ一つ思考を深めていく中で、どうしたら自分らしさを感じつつモチベーションを持って組織に貢献し、同時に自分自身の成長実感を持てるようになるのか、またそのためには個人だけではなく、組織の側も仕組みや制度を通して個人への支援をいかに行うべきなのか、その答えを考えてみたいと思います。
■執筆者プロフィール
武田 宏
日清製粉グループオリエンタル酵母工業にて海外貿易業務に従事。その後同社にて人事制度改革プロジェクトに参加し、「人」という経営資源のあるべき姿について学ぶ。2001年株式会社ニッペコに入社。海外企業(独)との資本・業務提携のプロジェクト遂行などを経て、現在は人事・経理・情報システム等の管理部門の責任者として経営補佐役を務める。
支援人事、キャリア開発支援に携わり15年が経過。現職の傍ら、現在放送大学大学院にて臨床心理課程で「心」を学び、組織視点だけでなく個人視点での成長にコミットできるよう研鑽を重ねている。
2020年よりタラントディスカバリーラボ代表、㈱セイルコンサルタントとして、キャリア開発支援活動を開始。