企業活動において、自社製品やサービスのブランディングには多くの時間・コストが費やされます。
一方で、人事部門ではどうでしょうか。独自のブランドを確立しているでしょうか。人事部門でも他社とは異なるブランド戦略が必要です。キャリアや企業の多様化が進む中、「ラーニングブランド」が求められています。
今回は、昨今の人事部に必要な「ラーニングブランド」について、その必要性から具体的な方法まで解説します。
そもそもブランドとは
ブランドは、人が創り出す製品、サービス、システムなどに対する何千もの体験から生み出されるものです。そのため、ブランドは戦略の原動力であり、ビジネスデザインの中心となる必要があります。
ブランドが企業において重要なことは周知の事実です。しかし、同じ「ブランド」といっても外向きのブランドは重要視されている一方で、内向きのブランドはないがしろにされている傾向にあります。
ラーニングブランドは社内向けのブランド構築
設備投資や生産と同じように、「社員に対するブランド構築計画」に注意を払う企業はほとんどありません。「ラーニングブランド」とは、こうした社内向けのブランド構築のことです。キャリアや企業の多様化が進む中、人材に目を向けた取り組みが求められています。ラーニングブランドを取り入れることで、採用のミスマッチの削減や従業員のモチベーションアップ、離職率の低下などが期待できるでしょう。
ラーニングブランドは人事部に関わるさまざまな業務に関わる
ブランドは単体で育成できるものではなく、人事部に関わるさまざまなプロセスが相互に深く関連しています。ブランドを構築し、組織を改善するには、すべてが協調して機能しなければなりません。ラーニングブランドに取り組む際、人事部門は、採用プロセス、研修、リーダーシップ開発など、各業務を連携する必要があります。例えば、採用の段階では、企業文化を考慮する必要があります。
同様に、評価システムでは、優秀な人材が集まってくるような組織づくりを目指すべきでしょう。人事部は、従来のコンプライアンス担当者という消極的な役割から脱却し、ブランド価値の積極的な推進者、さらにはイノベーションの源となる必要があります。
社内のラーニングブランドを行うポイント
ラーニングブランドは短期間で行うものではなく、長期的かつさまざまな要素が絡み合って成り立つものです。
社内でラーニングブランドを推進するポイントは、以下の3点です。
- 幅広い知識・経験を持つリーダーを配置する
- ラーニングブランドへの認知を高める
- ラーニングブランドの目的を共有する
幅広い知識・経験を持つリーダーを配置する
社会のラーニングブランドを構築するにあたり、人材開発のトップ層は幅広い知識・経験をカバーする専門家集団でなければなりません。ラーニングブランドに絶対的なメソッドはなく、企業や社会の情勢に応じて、求めるブランドが異なるからです。 例えば、金融、行動心理、テクノロジーといった専門分野などが求められます。偏ったリーダーが推進するラーニングブランドには危険が伴うため、適切な人材を吟味する必要があるでしょう。
ラーニングブランドへの認知を高める
ラーニングブランドの重要性は先述した通りですが、従業員に認知されてなければ、意味がありません。そこで重要となるのが、社内でのプロモーションです。人材開発部門およびラーニングブランドの価値を企業全体に宣伝し、従業員から「ブランド」を確立していく必要があります。まずは「ラーニングブランド」という言葉から社内に広めていきましょう。
ラーニングブランドの目的を共有する
ラーニングブランドは、サービスや商品のブランディングとは大きく異なります。表面的に社内教育を改善するだけでは意味がありません。ラーニングブランドの認知を広げ、その目的をそれぞれの従業員が理解する必要があります。具体的なデータや事例を示すなどして、「なぜラーニングブランドが従業員のパフォーマンスを向上させ、会社の利益につながるのか?」という説明を交え、導入の目的を従業員と共有しましょう。
まとめ
ブランドラーニングには時間・コストがかかります。ただし、正確な数字を測るのは難しいですが、適切なラーニングブランドの構築は、従業員や企業の価値に大きく貢献することも確かです。また、ブランドを確立することで、組織に合わない人材を判別しやすくなり、採用コストの節約にも繋がります。
企業において、ブランドを左右するのは「人」です。
採用プロセス、報酬制度、研修、表彰制度、測定制度などの人事部門の業務を、企業ブランドの提案や企業文化の醸成に直接結びつけることによって、企業は初めて差別化された顧客体験を提供することができます。
今後の人事部門には、管理機能だけではなく「組織の文化を育む機能」が求められていくでしょう。